特別対談|C-POWER GROUP代表 肥田和明×多治見市長 髙木貴行
<髙木多治見市長との対談特集>
福祉と聞くと、「自分には関係ない」と感じる人もいるかもしれません。でも、生まれたときから、高齢者になるまで、私たちは誰もが福祉と関わりながら生きています。
この対談を通して、多治見市の取り組みや、福祉を「自分のこと」として考える大切さを見つめます。

ー自己紹介をお願いします。
市長:第9代目多治見市長の髙木貴行です。就任して3年が経とうとしています。「市民が主役!躍動するまち 多治見」を掲げ、1人ひとりの価値観を大切にし、多様性の社会の中で市民の方々が活躍しながら、まちを底上げしていける多治見市を作り上げたいと考えています。
肥田:C-POWERグループ代表の肥田和明です。「頼れる先を増やし続けて自立する」という想いを大切に、企業と障がいのある方々の支援を行なっています。
髙木市長とは22年前に知り合って以来、交流させていただいています。本日はよろしくお願いします。
ー「福祉」と聞いても、何のことを指すのかわからない方も多いと思います。
それぞれの立場から「福祉」とは何か教えてください。
市長:行政の立場から言えば、市民1人ひとりが幸せに、このまちで安全安心に住み続けられるよう、必要な人へ適切な支援を行うことが福祉だと考えています。
肥田:私自身、毎日福祉サービスを受けながら生活を維持している当事者の1人です。日々の暮らしの中で、「明日は起き上がれるのだろうか」「親亡き後、どう生活していけばいいのだろう」といった不安に押しつぶされそうになるときに、福祉が身近で安心できる存在であってほしいと考えています。
だからこそ、障害福祉サービスを提供する立場としても、困ったときや不安なときに頼れる存在でありたいと思っています。
ー福祉サービスの支援や体制について教えてください。
市長:福祉サービスには、障害福祉や介護・高齢者福祉だけでなく、児童福祉や保健医療など、さまざまな分野があります。
肥田:私は、障害福祉の分野で事業を行なっています。自ら望んで障がいを抱えている人はほとんどいません。先天的な要因や外的要因、心理的ストレスなど、さまざまな理由によって、障がいのある方の社会参加が難しい現状があります。そうした方々が社会や地域で活躍していけるよう、働く場の提供をはじめ、安心して活動できる居場所づくりや、暮らしを支えるグループホーム事業に取り組んでいます。
また、2年前から児童への支援にも力を入れ、放課後等デイサービスを開始しました。子どもは必ず大人になっていくからこそ、できるだけ早い段階からより良い環境を整えることが大切だと考え、支援を行なっています。

市長:児童に関する取り組みとしては、多治見市では子どもの医療費無償化を18歳まで拡充しているほか、新たに児童発達支援センター「わかば」を開設するなど、特に児童福祉に力を入れています。子育て世代への支援として、駅北庁舎に「ぽかぽか広場(駅北親子ひろば)」を開設しています。概ね3歳までの親子が室内で遊べるほか、妊婦さんや保護者同士が交流できる場にもなっています。隣には保健センターがあり、子育てに関する相談ができる環境も整えています。さらに、2023年からは産後ケア事業を開始し、好評をいただいています。
介護・高齢者福祉については、国の制度が中心となりますが、多治見市としても、さまざまな支援や負担軽減の取り組みを行い、市民の暮らしを支えています。あわせて、医療体制についても多治見市は充実しています。1次医療(個人医院やクリニック)、2次医療(市民病院)、3次医療(県立多治見病院)と、それぞれの医療機関が役割を分担し、連携した体制が整っています。こうした医療体制により、平均寿命だけでなく健康寿命も年々延びており、高齢者の方が安心して暮らせる環境につながっています。
肥田:病院に困ることは少ないですよね。医療体制が整っていることで、中途障がい者の方々の命が救われるケースも多くあります。脳の損傷などにより、記憶を保つことが難しくなる高次脳機能障害の方も、充実した医療や福祉の支援があることで、社会参加や復帰を目指しやすい環境が整っていると感じています。
市長:1次・2次・3次医療がそろった医療体制があり、産後ケアの体制も岐阜県内でトップクラスです。また、市内13すべての小学校区に児童館・児童センターがあるのも、全国的に見てほとんど例のない環境です。しかし、こうした支援の充実ぶりは、日常生活の中ではなかなか実感しにくいのが現状だと思います。

肥田:制度や仕組みは整っているものの、当事者として暮らしていると、その良さに気づきにくい部分があります。市として取り組んでいることは本当にたくさんありますが、福祉サービスを「知らない」という状況があると、どれだけ良いサービスがあっても、必要な人に届きません。だからこそ、その情報をどう届けていくかが大切だと感じています。今回のC-fanを通して、福祉サービスを知らなかった人がその存在を知り、実際に利用して救われる。そんな流れを生み出していけたらと思っています。
ー福祉は、どんな人に必要なものだと思いますか。
市長:先ほどもお話にあったように、誰もが福祉の支援を受けようと思ってサービスを利用しているわけではありません。私たちは生まれた瞬間から子育て支援を受け、誰もが年齢を重ねて高齢者として福祉と関わります。そう考えると、福祉は一部の人のためのものではなく、誰もが人生のどこかで必ず関わる、自分の暮らしや人生を支える存在だということを、ぜひ多くの方に知っていただけたらと思います。
ーもし福祉サービスが必要になったり、介護・障がい・子育てなどで困ったらどこに相談すればいいですか?
市長:まず市役所の福祉課に相談していただければと思います。代表電話にお電話いただいても、窓口に直接お越しいただいても大丈夫です。「〇〇で困っている」とご用件を伝えていただければ、内容に応じて担当部署につなぎ、適切な相談や案内を行います。状況に合った福祉サービスをご紹介することもできます。
肥田:介護であればケアマネジャー、障害の分野であれば相談支援専門員など、専門家につないでもらえます。さまざまな相談に対応してきた経験もあり、最初に相談する場所として安心できる窓口だと思います。
ーこれから、どのようなまちづくりを進めていきたいと考えていますか。
市長:住み慣れたまちで、誰もが元気で安心して暮らし続けられるまちを目指しています。1人ひとり、立場や状況、困りごとは違います。そのため、それぞれの声に耳を傾けながら、必要な支援や取り組みを行い、課題にいち早く対応していきたいと考えています。
支援のしくみも、時代や状況に合わせて見直していく必要があります。行政だけではなく、地域の事業者の皆さんにも話を伺いながら、進めていきたいと思います。
肥田:私がまちづくりで大切だと感じているのは、「続けられること」です。「もっとこうしてほしい」という声に応えていくためには、組織がこれから先も成長し続けられるよう、安定した収入や財源が欠かせません。急に事業をやめたり、財源がなくなったから支援を終えることはできません。だからこそ、持続可能なまちづくりに力を入れなければいけないと思っています。
ー誰もが住みやすいまちをつくるために、多治見市民の皆さんに意識してほしいこと、考えてもらいたいことはありますか?
市長:誰もが住みやすいまちをつくっていくためには、福祉を「自分ごと」として捉えていただくことが大切だと思います。福祉サービスは、いつ・どこで・どんなタイミングで、自分や家族がお世話になるか分かりません。だからこそ、今は関係ないと思うのではなく、将来の自分や身近な人の姿を少し想像しながら、福祉やまちの取り組みに目を向けてもらえたらありがたいですね。
肥田:誰もが住みやすいまちづくりのために、障がいのある人自身が、もっと強くなっていくことも大切だと感じています。福祉サービスを受けることは当たり前の権利ですが、バリアフリーな社会を実現していくには、自分から外に出て人と関わり、声を上げていくことが必要です。不安や迷いなど、さまざまな気持ちがあると思います。それでも、勇気を出して一歩前に出なければ、まちは変わっていきません。障がいのある人が受け身のままではなく、地域の一員として社会に関わっていくことが、住みやすいまちづくりにつながると考えています。
市長:なるほど、とても心に響きました。本当にその通りだと思います。
肥田:私自身、電車に乗ろうとすると「乗りたい電車の20分前には言ってください」と言われることがあります。でも多治見駅では、5分前でもすぐに対応してもらえて、さっと乗せてもらえるんです。そうやって何度も利用する中で顔や存在を知ってもらい、車いすで行くたびに駅員の方から「乗りますか?」と声をかけてもらえるようになりました。
「怖いから」「できないから」と最初から諦めてしまうのではなく、普通に社会に参加していくことで、周りの人は自然と力を貸してくれるようになります。
ー最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
市長:私の最大の公約である「市民が主役!躍動するまち 多治見」のもと、障がいのある人もない人も、多治見市に暮らす皆さんが活躍できる環境をしっかりと整えていきたいと考えています。誰もが安心して元気で活躍できるまちを目指し、これからも取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
肥田:髙木市長のお話を聞き、私もすごく勇気をもらいました。2026年に向けてもう一歩前に進もうと考えたとき、理解のある環境や、安心して活動できるまちの存在は、障がいのある私の立場にとっても、とても心強いものです。これからも、勇気を持って挑戦する人たちを応援していただきながら、私自身も前に進んでいきたいと思います。

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